去る2025年11月1日(土)東京ボランティアセンター会議室Aにて開催されました。今回は「AI時代を生き抜くコミュニケーション能力を獲得しよう」というキャッチフレーズのもと、ゲストのS.N.さんやM.D.さん をお迎えし、熱気あふれる例会となりました。
ゲストのS.N.さんは今回が2回目の参加であり、すでに入会される意向を示されておりました。クラブのメンバーは、スピーチの楽しさや、相手にどう感じてもらい行動を変えてもらうかという点に常に意識を研ぎ澄ます必要性について、ゲストからの感想を通じて改めて学びました。
★例会を彩った多様な役割
この日の例会は、D.A.さん がトーストマスター・オブ・ザ・イブニング(TMOE)を務め、和やかな雰囲気の中で進行しました。
今夜の言葉(Word of the Evening) 今夜の言葉はM.K.さんによって「バイアス」が紹介されました。
M.K.さんは、この言葉を元々は手芸用語だと認識していたものの、最近ではITやAIの文脈で「先入観、偏見、偏り」といった意味で耳にするようになったと説明しました。
AIのバイアスとは、人間が与えるデータに偏りがあると、AIの結果も偏ってしまう状態であるとし、人間もAIと同様に多くの経験を積み、偏りを少なくしていくことが重要であると強調しました。
★ヘルパーの報告
文法係を担当したH.N.さん は、言葉の使い方について具体的なフィードバックを行い、特に「すごい」という言葉を名詞以外で使う際の注意点などを共有しました。
★準備スピーチ:聴衆を「覚醒」させるために
今回の例会では2名の会員が準備スピーチに挑戦しました。
スピーカー1:K.M.さん
K.M.さん は、パスウェイズの「リサーチとプレゼンテーション」(L1:基本を習得する)のプロジェクトに取り組み、「覚醒するプレゼンテーション一考察 ~スピーチ(Speech)が子守歌 (Sleep)にならないために~」というタイトルで発表しました。
K.M.さんは、聴衆を眠らせてしまうプレゼン(子守歌のような単調な話し方)の要因を分析し、トーンが単調で抑揚がない音声は聴衆のアルファ波を上昇させ、リラックス状態を誘うという研究結果を紹介しました。
一方、記憶に残る「覚醒するプレゼン」は、リズム感、優しさと強さの共存、バラエティーに富んだ声質など、抑揚に富んでいると述べました。
K.M.さんは、力強さを獲得するためには、テクニカルなスキルだけでなく、「自分への自信」が最も重要であり、自信があればスピーチに力強さが自然と出てくるのではないか、というメッセージで締めくくりました。
スピーカー2:T.Y.さん
T.Y.さん は、パスウェイズの「説得力のある話し方」(L3:知識を増やす)のプロジェクトに取り組み、「スキルでは得られないセンス?!」というタイトルでスピーチを行いました。
T.Y.さんは、クラブ会員へのアンケート結果から、「スキルでは得られないセンス」を学びたいというニーズが高かったことに触れ、「センス」を「感覚」と定義しました。
そして、一般的な五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚) 以外にも、人間には12の感覚があるという考えを紹介し、センスとは、これらの感覚を日々の中で「知り、感じ、育てる」ことによって養われるのではないかと結論付けました。
T.Y.さんは、自身の愛用の財布(使い勝手は悪いが「可愛い」という感覚がある)を例に出し、この「可愛いという感覚」こそが大切だと結びました。
★即興スピーチ:過去問に挑戦—創造性を問うユニークな設問
テーブルトピックス(即興スピーチ)の時間は、S.Y.さんがマスターを務め、今回は全国大会などのコンテストで出題された過去問集が使用されました。
S.Y.さん は、これらの問題は知識を問うよりも、瞬発力や創造性を意識させるユニークなものが多いと説明しました。
まずM.K.さんには、「食パンの耳について、どう思いますか?」というお題が出題されました。M.K.さん は、耳は白い部分より美味しいと主張し、パン屋で耳の部分が外されて売られている現状に疑問を呈しました。
耳はただ/安く売られているが、自分にとっては価値があるのだから、むしろ高く売れるべきだと逆説的に論じました。
C.M.さん は「財布を電車の中に忘れて、札幌駅に到着しました。まず、どうしますか?」という、前提条件を揺さぶる質問に挑戦。
C.M.さん は、札幌に住む高校の同級生に公衆電話で連絡し、お金を借りたり、食事をしたりして過ごすという具体的な解決策を提示しました。
T.Y.さんには、トーストマスターズの根幹に関わる「トーストマスターズ国際本部が何らかの理由で倒産しました。どう立て直しますか?」という難題が投げかけられました。
T.Y.さん は、国際本部が倒産しても、最終的に残るのはトーストマスターズをやってきた人、すなわち地域コミュニティ(ローカルクラブ)仕組み(システム)さえ残っていれば、ウェブサイトや会費徴収が一時的になくなっても、ゼロから立ち上げられるという力強いビジョンを示しました。
K.M.さん は「現在、ご自身で努力されていることはありますか?」というお題に対して、「お酒を控えること」を現在の目標に設定。
きっぱりやめるのは難しいから、「明日から」量を減らす努力をすると宣言し、会場の笑いを誘いました。
そして、I.Y.さんが挑戦したのは「居酒屋で友人と信じて会話。全く知らない人でした。
どう処理しますか?」という社交性が問われるトピック。
I.Y.さん は、まず自分自身が人の顔を見極める能力が低いというエピソードを紹介し、居酒屋では「もう飲むしかない」と潔く宣言。
相手を亡くなった友人のそっくりさんだと設定するなど、「変なバイアスをかけずに」、その場を楽しんで新しい友達として飲み続けるという処理方法を提案しました。
最後のH.N.さん は「20年後の自分は何をやってますか?」という未来への展望を語りました。
H.S.さん は66歳になっても仕事を続ける意向を示し、具体的な夢として、カレイの煮付けなどを出す小料理屋のママ や、現在の仕事である障害者の定着・採用支援に関連する事業を個人で立ち上げたいという目標を共有しました。
これらの即興スピーチは、瞬発的な思考力とユーモア、そして論理的な展開が試される場となりました。
★論評と受賞者の発表
例会で最も重要とされる論評のコーナーでは、スピーカーに対して具体的なフィードバックが提供されました。
K.M.さんへの論評はM.T.さん が担当し、スピーチの構成の一貫性や話し方(抑揚、スピード、大きさ)の素晴らしさを称賛しました。
さらに、聴衆を巻き込むことや、自分をさらけ出す話し方を加えることで、より伝わるようになるだろうと具体的な改善点を提示しました。
T.Y.さんへの論評はM.K.さん が担当し、聴衆のニーズを把握した上で、議論を「スキル→センス→感覚→多くの感覚」と畳みかけるように進める論理展開が説得力向上につながったと評価しました。
受賞者
例会の最後には、投票に基づき以下の受賞者が発表されました。
• 最優秀準備スピーチ賞:K.M.さん
• 最優秀論評賞:M.T.さんとM.K.さん(同時受賞)
• 最優秀テーブルトピックス賞:M.K.さん
飯田橋トーストマスターズクラブのこれから
総合論評を担当したC.M.さん は、例会運営に対するフィードバックを提供し、参加者が少ないときには企画物(教育セッション)などを入れると良いという提案もなされました。
会長のI.Y.さんからは、今後の連絡事項として、12月20日にクリスマス会とワークショップが企画されていること、また、2024年4月以降、現在の会場が利用できなくなるため、九段下をベースに活動していく方針が示されました。
飯田橋トーストマスターズクラブでは、今回のように実践的なフィードバックを通じて、ゲストや会員の皆様がコミュニケーション能力を向上させるサポートをしています。
新しい環境でスピーチやリーダーシップを学びたい方は、ぜひ次回の例会にもご参加ください。
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トーストマスターズクラブは、一人ひとりが持つ「センス」を磨き、自信を持って発言する能力を育てる場所です。
まるで、五感だけでなく、自分の中にある多様な感覚(センス)を一つ一つ丁寧に育てていく菜園のようなものです。様々な役割やスピーチに触れることで、自己成長のきっかけを見つけてみませんか。
